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親族企業から役員報酬でNHKアナに厳重注意/副業・兼職規定について

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はじめに

夜のニューズ番組を担当していたNHKアナウンサーが、上司への報告なく親族企業から役員報酬を受け取っていたとして、NHKから厳重注意処分を受けていたことがわかりました。兼職を禁止する服務準則への違反が理由とのことです。 いまだトラブルが絶えない副業・兼業問題。国内で従業員の副業・兼業(以下、「副業など」)を認める企業は増えてきている一方、制度導入にあたっては注意が必要となります。
 

親族経営企業からの報酬を報告せず

NHKで夜9時から放送されている「ニュースウオッチ9」。報道などによりますと、同番組のキャスターを務めた青井実アナウンサーが、兼職を禁止する服務準則に基づいて、年末に厳重注意を受けていたといいます。 青井アナは父親や姉ら親族が経営する会社、合わせて4社の役員になっており、そのうち3社では無報酬でしたが、1社から役員報酬を受けていたということです。 NHKの服務準則では、「副業を行うには上司の許可が必要」と定められているそうですが、今回、外部からの通報で青井アナの無断副業が発覚したといいます。 通報を受けてNHK側は青井アナに事情を聴取。その結果、青井アナが、 ・服務準則に基づく報告義務を知らなかったこと ・自身が親族の会社の役員を兼ねていたことを知らなかったこと などがわかったということです。 その後、青井アナは、役員報酬の全額返金と役員退任を申し出たそうで、会社は意図的ではなかったとして、口頭での厳重注意にとどめたということです。 (NHKはこの厳重注意について懲戒処分に当たらないため、公表していません。) なお、処分を受けた後も青井アナは番組に出演していましたが、1月18日に本人からの申し出があり降板しています。
 

副業などを認めるにあたって

近年、国内において副業解禁の動きが加速しており、すでに従業員の副業などを認めている又は今後認める予定とする企業は半数以上にのぼるとも言われています。 副業などの解禁が加速する背景には、厚生労働省が2018年に発表した『働き方改革実行計画』でのモデル就業規則の影響もあるとみられています。 モデル就業規則の中で、副業を認めないとする条文は廃止され、代わりに副業を可能とする一文「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」が追加されています。また、この他にも、副業などを行うにあたり、会社への事前届出が求められること、副業などを禁止・制限できるケースなども明記されています。

[モデル就業規則が定める禁止・制限できるケース] ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

就業規則見直しでの注意点

今後、新たに副業などを解禁する企業は、就業規則の見直しが必要になります。その際に、特に留意したい事項が以下です。 (1)従業員の労働時間の管理 労働基準法第5条では、企業は従業員の安全を確保するために配慮することなどが義務付けられています。そのため、従業員が副業をしていることで業務過多や長時間労働となっていることを把握しつつ、何の配慮も行わずに従業員の健康が損なわれると、会社側が責任を問われる場合があります。 (2)営業秘密などの情報漏洩の防止 特に従業員が同業界で副業を行う場合、技術情報などの営業秘密が漏洩するリスクがあります。そのため、就業規則で秘密保持義務についての項目を丁寧に設ける必要があります。また、副業開始にあたり、従業員と秘密保持契約を別途締結することも効果的です。 (3)競業避止義務の設定 ライバル企業などでの副業を禁止・制限する項目を設けることで、自社への不利益を避けることができます。ただし、職業選択の自由が憲法で保障されているため、合理的な範囲を超えた競業避止義務を従業員に課した場合、後に無効と判断されるおそれがあるため、要注意です。 (4)誠実義務の徹底 会社の名誉・信用を損なわないなど、誠実に行動することが求めることができます。就業規則などでは、会社との信頼関係を破壊する行為がある際に、副業・兼業を禁止・制限できることを明記しましょう。
 

コメント

今回のケースでは、青木アナがNHKの服務準則の内容を正確に把握していなかった可能性があるとされています。実際、自社の就業規則等の内容を把握していない従業員は少なくないといわれています。 適切な内容の就業規則を作ることはもちろん大切ですが、全社的なアナウンスや、副業を希望した従業員への個別の念押しなどにより、規則の内容をしっかりと周知し、トラブル回避につなげることが重要です。
 

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