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「鬼滅の刃」海賊版DVDの輸入販売で無罪判決、著作権法違反の故意が否定

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はじめに

人気アニメ「鬼滅の刃」の海賊版DVDを輸入販売したなどとして、著作権法違反と関税法違反(禁制品輸入未遂)の罪に問われていた男性の裁判で、水戸地方裁判所下妻支部は2月28日、男性に無罪を言い渡しました。 世界中で後をたたない海賊版の流通。中には、意図せず著作権侵害等を行ってしまっているケースも見受けられるといいます。
 
 

仕入れ先から“正規版”と回答

4年前に、「鬼滅の刃」のアニメが収録されたDVD6枚を輸入し、合わせて1万9400円で販売した43歳の男性。その後、同じ内容のDVD3枚組・200箱をマレーシアから航空便で輸入しようとしたとして、著作権法違反と関税法違反の罪に問われました。 公判では、男性に著作権法と関税法違反の故意があったかどうかが争点となりましたが、検察側は、 ・販売価格が非常に安価であること ・男性が海賊版かどうかをマレーシアの仕入れ先に確認していたこと などから、男性が「海賊版である可能性を把握していた」と主張。懲役1年6か月、罰金50万円を求刑していました。 一方で弁護側は、「輸入、販売したDVDは正規版だと認識していた」として無罪を主張していました。 水戸地方裁判所下妻支部は、DVDに“マレーシア政府発行”と見受けられるシールが貼られていたことや、男性が仕入れ先に対して、商品が海賊版かどうか確認した際に、正規版である旨の回答を得ていたことから、「商品の画像を見るだけではその(正規版との)説明が疑われる事情はうかがえない」と指摘。 著作権者から許諾を受けずに複製されたDVDであると男性が認識していたとは言えないとして、著作権法と関税法に違反する故意があったと認めることはできないと結論づけました。
 

海賊版への取り締まり強化

近年、海賊版・模倣品の被害は後を絶ちません。知らぬ間にそれらを仕入れてしまい、今回のように事件に巻き込まれてしまうケースもあります。 特に、日本のアニメ・漫画などは世界的な人気を誇り、海外での日本コンテンツに対する権利侵害は深刻な状況となっていると政府も懸念しています。さらに、新型コロナウイルス感染拡大で増加した「巣ごもり需要」に伴い、DVDのみならず、インターネット配信される違法動画などによる被害も深刻なものとなっています。 こうした中、2023年5月に「著作権法の一部を改正する法律」が可決・成立し、今年1月1日より施行されています。 この改正のポイントの一つに、海賊版被害にあった際の賠償額増額に向けた新たな損害算定方法の導入が挙げられます。 改正前は、海賊版被害に対する損害賠償請求で認められる賠償額が低額にとどまることが多く、損害賠償を支払っても権利侵害者の手元に多くの利益が残るという構図が生まれていました。今回の改正により、認定される賠償額が増額されることで、海賊版被害者への救済が実効的なものとなると期待されています。 また、権利者が損害賠償請求を行うにあたっては、損害額の立証が一つのハードルとなりますが、今回の著作権法改正で、より権利者の立証負担を軽減するための配慮がなされています。 著作権侵害への救済手続(特許庁)

●刑事罰について 著作権を侵害すると、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されます(著作権法第119条)。また、法人については、その業務に関して侵害行為を行った場合、その実行行為者の処罰に加えて、業務主体たる法人にも罰金刑(原則3億円以下)が科されるとする、いわゆる両罰規定がおかれています(著作権法第124条)。

コメント

インターネットを介しての個人輸入なども活発となっている昨今、自社の従業員が海賊版の取り扱いにより、権利侵害者となる可能性も否めません。海賊版か否かの確認のポイント、著作権法違反のリスクの大きさ等、会社全体への周知も必要となります。 また、今回の事件では、アニメを無断複製・販売する行為が問題となりましたが、こうした“海賊版行為”のみならず、“模倣品の製造・販売”による商標権や特許権侵害も大きな問題となっています。いずれも刑事罰が科されるおそれがあり、会社が意図せず侵害者となってしまった場合、経営に大きな打撃を与えることが予想されます。 そのため、仕入れにあたっては、国内外を問わず、信頼できる取引先かどうか、会社の実績などを改めて確認することも重要となります。
 

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