はじめに
特定保健用食品(トクホ)の一部で効果に関わる成分が規定量を下回っていた問題を受け、消費者庁は30日までに、トクホの買い上げ調査を始めるなどの対策を発表しました。トクホは一度許可されれば更新の必要がないため、許可後も同庁が品質を把握できるようにするそうです。
買い上げ調査は今年度から始め、抜き打ちで実施されます。そして、事業者には年1回程度、第三者機関による成分量の分析を受けて結果を同庁に報告することを義務付けています。そこで今回は特定保健用食品(トクホ)についてまとめてみました。
特定保健用食品とは?
特定保健用食品(トクホ)とは、健康増進法(平成14年法律第103号)第26条第1項又は第29条第1項の規定に基づき、「特別の用途」の一つである「特定の保健の用途」に適する旨の表示をすることについて、消費者庁長官の許可又は承認を受けた食品のことです。特別の用途とは、同項において「乳児用」、「病者用」等の用途のほか内閣府令で定めるものとされており、内閣府令第1条に規定された「特定の保健の用途」もその一つです。
「特定の保健の用途の表示」とは、健康の維持・増進に役立つ、又は適する旨の表示をいい、例えば、「お腹の調子を整える」「コレステロールの吸収をおだやかにする」「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」等が挙げられます。
特定保健用食品として販売するためには、製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、表示について国の許可を受ける必要があります。特定保健用食品及び条件付き特定保健用食品には、許可マークが付されています。
出典:消費者庁 「特定保健用食品とは」(PDF)
消費者庁 「特定保健用食品に関する質疑応答集」(PDF)
買い上げ調査実施の経緯
消費者庁は2016年9月23日、日本サプリメント株式会社が販売していた特定保健用食品(トクホ)の6商品について、健康増進法第28条第1号及び第3号にに基づき、許可の取り消し処分を行いました。同社の自主検査で関与成分量が規格値を満たしていない疑いや、関与成分がそもそも含まれていなかった事実が判明したのを受け、特定保健用食品(トクホ)の要件を満たさないと判断しました。1991年9月の特定保健用食品(トクホ)制度施行以降、許可取り消しは初の事態でした。この事態を受け、消費者庁は特定保健用食品(トクホ)の買い上げ調査を始めました。
出典:消費者庁 「特定保健用食品の許可取消しについて」(PDF)
消費者庁 「特定保健用食品に対する今後の品質管理等の徹底について」(PDF)
そして、2016年11月1日、 11月29日に消費者庁より特定保健用食品の関与成分に関する調査結果について発表があり、同庁は販売中の366商品全てに問題は無かったとしました。
出典:消費者庁 「特定保健用食品の関与成分に関する調査結果について」(PDF)
消費者庁 「特定保健用食品の関与成分に関する調査結果について(第2報)」(PDF)
今後の展開
岡村消費者庁長官は2016年9月28日の会見で、買い上げ調査について「制度として恒久的にするかどうかというところまでは、今は組織決定をしたわけではございません。ただ、買上げ調査をした方がよいというご指摘自体は以前から有識者からも出ていたことでもあり、実は来年度からは実施したいと考えておりました。
今回の残念な事態を受けて前倒しでできることからでも始めてみたいということでございます。この件が発覚しなければ来年の4月から開始したいと考えていたために、この冬の段階で調査の仕方を一般的に検討するつもりでした。
ただ、今回の件を受けて、有効な再発防止策として考えられる買上げ調査をまずは優先度の高いものからやっていきたいと。予定を前倒しするに当たって当初のプランよりも修正した形で、できることからやっていきたいと思っています。」
とのことから、買い上げ調査の制度も今後変更されるかもしれません。
出典:消費者庁 岡村消費者庁長官記者会見要旨 平成28年9月28日
最後に
特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠が基づいていることを国が認めて販売されていることから、人気のある商品です。トクホの許可取り消しという事態が生じれば、企業の信用やイメージを低下させることになります。消費者庁がなぜ取消しをするという判断に至ったかは、記者会見要旨からみるに、企業自身が関与成分が規定量含まれていないという事実の認識を消費者庁に申し出る相当前から認識していながら、それを放置していたことが悪質だと判断されたからのようです。このような事態を未然に防ぐためには、、関与成分の規定量等に変化が見られたら消費者庁に報告をきちんと行う体制が必要です。この点を企業の法務部としては、「トクホの許可取り消し」が企業にどのようなダメージを与え、許可基準を守ることがどうして大切なのかをを伝えるため社員研修の実施やパンフレットの制作等を企画するとよいかもしれません。