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船井電機が東京地裁に開始申立て、民事再生手続について

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はじめに

 破産手続き中のAV機器メーカー「船井電機」(大阪府大東市)が2日、東京地裁に民事再生法の適用を申請したと発表しました。申請は受理され、破産か民事再生かを裁判所が判断することとなります。今回は民事再生の手続の流れを見直していきます。
 

事案の概要

 報道などによりますと、船井電機は今年10月に経営破綻し、東京地裁から破産手続開始決定を受けておりました。負債総額は役470億円で、債権者は金融機関など約520にのぼるとされます。しかし10月初旬までに就任していた代表取締役会長が破産手続開始決定の取り消しを求め即時抗告をするなど、経営陣の間でも破産か経営再建かで意見がわれていたとのことです。そんななか同会長は東京地裁に民事再生法適用の申請を行い、受理されたと発表しました。グループ全体では約200億円の純資産が残っており、グループで見れば資産超過状態にあり、事業再生は可能と主張しております。なお即時抗告に関する東京高裁の判断はまだ出ていないとのことです。
 

破産と民事再生

 破産は債務超過状態にある会社の精算を目的とする手続です。裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を調査し、金銭に換価して債権者に配当し、最終的に会社は無くなります。一方、民事再生は裁判所の監督のもとで、再生計画を立て、債権者の同意を得て会社を再建していくこととなります。このように破産は会社を精算してしまうことが目的であるのに対し、民事再生は会社を再建して継続させていくことが目的となっており、そこに根本的な違いがあります。なお民事再生と同じく再建型の倒産処理手続として会社更生というものも存在します。こちらも会社の存続が前提となっている点で民事再生と同様ですが、いくつか大きな違いがあり、まず現経営陣が全員退任し、管財人に経営権や財産管理権が移転します。その他にも担保権の実行ができなくなったり、株主の権利内容が変更される場合があるなど、より厳格で重い手続と言えます。
 

民事再生の要件

 民事再生申立ての要件は、(1)破産の原因となる事実が生じるおそれがある場合、または(2)債務の支払いが事業の継続に著しい支障をきたす場合とされております(民事再生法21条1項)。破産の原因となる事実とは、支払不能の状態に陥っていることを言うとされます。具体的には手形の不渡りを出すなど、財産や信用状況から見て、一時的ではなく継続的に支払い能力が不足している状態を言います。なお会社など法人の場合は債務超過状態でも該当するとされます。そして債務の支払いが事業の継続に著しい支障をきたす場合とは、債務の弁済のために会社の設備や資産の売却等が必要となり、弁済することによって事業の継続が困難となる場合を言うとされます。また民事再生法25条では、民事再生を認めない場合として、費用の予納がないとき(1号)、すでに開始している他の手続のほうが適切なとき(2号)、再生計画案の作成、可決、認可の見込みがないことが明らかなとき(3号)が列挙されております。
 

民事再生手続の流れ

 民事再生手続の大まかな流れとしては、(1)申立てと保全処分、(2)監督委員の選任と監督命令、(3)民事再生手続開始決定、(4)債権届出、財産評定、財産状況の報告、(5)債権調査期間、債権認否書の提出、(6)再生計画案の作成、決議、認可、(7)再生計画の遂行となります。再生手続開始申立てを行う際には、同時に保全処分申立ても行います。これにより債務の弁済や債権者による仮差押等ができなくなります。民事再生では破産等のような管財人ではなく、監督委員が選任され、財産管理は現経営陣が引き続き行います。申立てから2週間程度で開始決定が出されます。債権者は債権届出を行い、会社は財産評定や債権認否を行って財産目録や貸借対照表、認否書等を作成して裁判所に提出します。その後会社はどのように債務を返済していくかを示した再生計画案を作成し、裁判所に提出、債権者集会で承認を受け、裁判所の認可を受けることとなります。債権者集会では債権者の過半数かつ債権総額の2分の1以上の賛成で可決となります。再生計画の認可後3年間は監督委員のもとで遂行することとなります。
 

コメント

 本件で船井電機は経営破綻後、取締役の1人が単独で破産手続申立てを行う、いわゆる「準自己破産」によって破産手続が開始したという背景があり、経営陣の中でも破産によるべきという意見と、事業再建を目指すべきとの意見に割れているとされます。同社会長は既に破産手続開始決定に対して即時抗告を行っており、事業再建の可能性などを踏まえて破産、民事再生のいずれが適切かを裁判所が判断することとなります。以上のように会社の倒産処理手続は、破産などの精算型と、民事再生、会社更生といった再建型に分けられます。債務超過により破産が開始していた場合でも再建型手続の申立ては可能で、いずれによるべきかは裁判所が判断することとなります。それぞれの手続のメリット・デメリットなどを踏まえて、どの手続によるべきかを慎重に検討していくことが重要と言えるでしょう。
 

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