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「おもちゃ王国」木造立体迷路事故、当時の支配人らを業務上過失傷害容疑で書類送検

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はじめに

2021年10月に兵庫県の遊園地「東条湖おもちゃ王国」で発生した事故。木造の立体迷路施設の床が抜け、利用客が骨折などの怪我を負ったものでした。 この事故を受け、兵庫県警は12月6日、安全管理が不十分だったとして当時の支配人など3人を業務上過失傷害の疑いで書類送検しました。
 

事故原因は遊園地運営側の点検不備?

事故は2021年10月10日の午後2時ごろ発生しました。東条湖おもちゃ王国内にある、木造5階建ての立体迷路施設「カラクリ迷宮のお城」の3階部分の床の一部が幅約1メートル、長さ約2メートルにわたって抜け、約2.4m下の2階部分に落下したということです。施設3階には当時1~38歳だった利用客7人がおり、転落。20代の男女2人が腰を骨折する重傷、7~38歳の男女4人が軽傷を負いました。幸い、1歳の女児にけがはなかったといいます。 事故は床板を支える木製の梁(横木)が腐食して強度が落ち、それが利用客の重さで破損し、折れたことが原因とみられています。迷路には屋根がなく、雨により梁(横木)などが腐食しやすい状況でした。 この事故を受け、兵庫県警は12月6日、「迷路3階の床板を支えていた梁(横木)の腐朽崩落の危険性を認識できたにもかかわらず、社内点検を適切に実施せず、また、専門技術者により年に1回行われるはずの点検を約2年半受けず事故防止のための十分な安全管理を怠った」などとして、東条湖おもちゃ王国の当時の遊園地支配人(52)、マネジャー(41)、現場リーダー(29)の3人を業務上過失傷害容疑で書類送検しました。3人は点検に不備があったことを概ね認めているということです。
 

木造立体迷路施設に対する法的規制の未整備を指摘する声も

消費者庁安全調査委員会が行った事故後の調査で、落下した梁(横木)と床受け木に木材腐朽菌由来と考えられる白色の菌糸の不着が確認されています。 一方で、専門家によると、床板の裏面に接する梁(横木)や床受け木に関し、床板を外さずに目視等による点検だけを行った場合、よほど腐朽が進行していない限り、腐朽を発見することは困難ということです。 東条湖おもちゃ王国では、毎日の営業開始前に加えて、月に一回の“目視による点検”を実施していました。また、2019年4月には東条湖おもちゃ王国による委託で設置事業者による点検も行われましたが、事故発生まで、木材腐朽を示す菌糸の不着は確認できていなかったといいます。 ちなみに、東条湖おもちゃ王国の運営者は、過去に木造大型遊具の維持管理経験がなく、加えて、木造立体迷路の設置引渡しを受けた時にも、設置事業者から取扱説明書や点検方法等の書類の引渡しはされていなかったということです。 そのため、同種事業者から設置事業者の点検表を入手し、それを参考に点検項目を定めていたといいますが、入手した点検表上、腐朽については「全体 木部の腐蝕」という一項目があるのみだったことから、床板の裏面の点検に関し、点検表に項目は置かず、施設全体の目視や触診による点検に留まっていたといいます。 同様の木造立体迷路施設は全国各地に数十単位であるとされており、2014年にも群馬県の施設で床が抜け2人が負傷しています。 遊園地に一般的に設置されているジェットコースターやメリーゴーランド・観覧車などの駆動装置付きのアトラクションについては、「準用工作物」として建築基準法による規制対象となっており、同法により、定期点検や行政への報告が義務付けられています。 その一方、木造立体迷路施設は駆動装置が付いていないことから「準用工作物」に該当せず、また、その多くは屋根がないことから建築基準法上の「建築物」に該当しません。そのため、法的規制が事実上ない状況といえます。 このように、木造立体迷路施設の安全管理が施設運営者任せになっている現状を打破すべく、消費者安全調査委員会は今年11月27日、「木造立体迷路施設の安全基準」を策定するよう経済産業省に求める報告書を公表しています。 【参考】消費者事故等調査報告書 木造立体迷路における事故(消費者安全調査委員会) https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_023/assets/csic_cms201_241127_10.pdf
 

コメント

事故が起きた木造立体迷路施設を作った遊具施工会社によると、東条湖おもちゃ王国は事故の数か月前に同社の点検を受ける予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う一時休園もあって、これを中止。その後、点検を受けることなく営業を再開していたということです。 施設側の安全点検への高い意識と共に、全国各地にある木造立体迷路施設の安全基準の早急な策定が求められます。
 

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