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ストレスチェック全事業所で義務づけへ

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はじめに

厚生労働省は、1月17日、すべての事業所に対して、従業員のメンタル状況を観察するためのストレスチェックの実施を義務付ける方針をまとめました。 従来は従業員50人以上の事業所のみが対象となっておりましたが、今後は、50人未満の零細企業も対象に加わる見通しです。 背景には、仕事上のストレスを理由に精神障害となった人数が過去最高を記録し、職場環境の改善が急務となったことなどがあります。
 

現行のストレスチェック制度について

「ストレスチェック制度」とは、定期的に労働者のストレス状況について検査を実施するものです。労働安全衛生法の一部が改正され、ストレスチェックと面接指導の実施等を義務づける制度として創設されました(2015年12月施行)。 ストレスチェック制度の主な狙いとしては、 ・一次予防(労働者のメンタルヘルス不調の未然防⽌) ・労働者自身のストレスへの気づきを促す ・ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる などが挙げられます。 ストレスチェックでは、まず、仕事量や直近1ヶ月の体調・精神的な状況などを調査するための質問が用意され、回答を集計してストレス度を数値化します。その結果「高ストレス」と判定された従業員には、医師の面接指導を勧める流れとなります。 ストレスチェックの具体的なやり方に関しては、以下の内容が定められています。 ① 常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査を実施すること。 (労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務) ② 検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止。 ③ 検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務。また申出を理由とする不利益な取扱いは禁止。 ④ 面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務。 上述のように、こうしたストレスチェックの対象となるのは、現状、労働安全衛生法施行令第5条に示す「常時50人以上の労働者を使用する事業場」です。 ちなみに、週1回出勤のアルバイトやパート労働者であっても、継続して雇用し、常態として使用していれば、常時使用している労働者として50人のカウントに含める必要があるため、注意が必要です。 なお、ストレスチェックは、(1)ストレス要因、(2)心身のストレス反応、(3)周囲のサポートの3領域を含む形で行われ、年に一度の実施が義務付けられていますが、2021年度の国の調査で、受検者の7割以上が「有効だった」と回答しているということです。
 

精神障害となった人数過去最多に

このように、現行のストレスチェック制度は一定の効果を発揮していますが、その一方で、ストレスチェック制度の対象とならない事業場で働く労働者のストレスケアが問題となっています。 厚生労働省は2024年6月、「2023年度、仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神障害として労災認定された人数が883人に及んだ」と発表しました。これは、過去最多の数字で前年比173人増加。10年前と比べても2倍の数だといいます。また、過労自殺をした人数は未遂も含めると79人となり、12人増加しています。 こうした背景もあり、厚生労働省の有識者検討会は2024年3月から議論を続けて来ましたが、今年1月17日、審議会は「メンタルヘルスの不調を防ぐためにストレスチェックの義務化をすべての事業者へ拡大する」旨の報告書をまとめました。
 

コメント

従業員規模50人未満の事業所においては、やはり、ストレスチェックの実施率が低いというデータがあるといいます。法律で義務化されていないからという理由と共に、小規模事業所においては、折からの人手不足などの影響もあり、ストレスチェックを全社的に実施するゆとりがないという声も聞かれます。 しかし、ストレス対策は現在進行形で労働者および事業所が直面し続けている切迫した危機といえます。今後の法改正の動向を注視しつつ、法改正前から、自社として出来るストレス対策に着手することが大切です。
 

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