初めに
近年、敵対的買収への対応や、会社の意思決定を迅速に行いたいなどの経営戦略上、株式の非公開化をするという選択をする企業が増えています。
そこで今回は株式の非公開化の手順の一つであるスクイーズ・アウトについてまとめてみました。
株式の非公開化
株式の非公開化とは、既に上場し、不特定多数の株主が自由株式の売買できている状態から、会社が全ての株式を買い取って証券市場から撤退することをいいます。
そして、株式のすべてを買い取る方法としてMBO(マネジメント・バイ・アウト)が使用されます。
MBOとは、経営陣が株主より自社の株式を譲り受けたり、あるいは会社の事業部門のトップが当該事業部門の事業譲渡を受けたりすることで、オーナー経営者として独立する行為のことです。機関投資家等に対するIRコストの高騰、さらには敵対的買収からの回避策として非公開化に至るケースです。
上場会社の株式非公開化について(出典 アイピーオー総合研究所株式会社)
スクイーズ・アウト
上場企業のMBOは、一般的にTOBの手続きにより発行済株式総数の2/3以上の株式を買い取った後でスクイーズアウト(絞り出し)し、非公開化するというスキーム(事業計画)で行われます。TOBの手続きについてはこちら
スクイーズアウト(Squeeze Out)とは、もともと「閉め出す」という意味があり、M&Aで、会社の株主を大株主のみとするために、当該会社の少数株主に対して金銭等を交付することで当該企業の株主から強制的に閉め出す(排除する)手続きをいいます。
スクイーズ・アウトの手法には主に下記のようなものがあります。
【特別支配株主の株式等売渡請求】
当該会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)は、他の株主の全員に対して、その株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求できます。平成26年会社法改正で、新たに創設された制度です。手続きの流れはこちら [PDF]ちょっと「キーワード」 特別支配株主の株式等売渡請求 - (出典 大和総研)
【全部取得条項付種類株式】
現在発行されている株式に全部取得条項を付し、当該社会が株式をすべて取得した後、大株主には他の種類の株式を交付し、少数株主には、端数処理した上、金銭を交付するものです。
平成26年会社法改正により、「事前開示・事後開示制度」「差止請求制度」「株主への通知制度」「取得価格決定申立規定」等が導入され、少数株主保護の充実が図られています。手続きの流れはこちら [商業登記編]~キャッシュ・アウトにおける会社法改正~ (出典 フォーサイト総合法律事務所)
【株式併合】
複数の株式を合わせてより少数の株式とする行為です。
平成26年会社法改正により、「事前開示・事後開示制度」「差止請求制度」「反対株主による株式買取請求」が導入され、少数株主保護制度が新設されました。改正後は全部取得条項付種類株式の手法に代わってこちらが用いられているそうです。株式併合の手続き(出典 富山綜合法務事務所)
こちらに書面に記載する事項や詳しい制度が記載されています。中小企業の事業承継・M&Aにおけるスクイーズ・アウトの最新動向
(出典 BISINESS LAWYERS)
終わりに
株式の非公開化のためにとる手続きとして、TOBですべての株式が取得できればすぐに非公開化ができますが、そうではない場合にまずTOBにより発行済株式総数の2/3以上の株式を買い取りを目指し、その後でスクイーズアウトをすることになります。ここでも90%以上取得できるか否かでスクイーズアウトの手続きが変わっていきます。