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営業秘密だったパスタの“もちもち感”製法を不正使用したとして委託先企業を提訴

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はじめに

委託先の会社に原材料の配合等の「営業秘密」を不正に使われたとして、パスタなどの食品の販売・卸しを行う会社が、1億円の損害賠償等を求める訴訟を神戸地方裁判所明石支部に提起していたことがわかりました(2月14日付)。 営業秘密と認められるための要件などを改めておさらいします。
 

原告は、独自開発した原材料の配合や製法の不正使用を主張

今回、訴えを提起したのは、神戸瑞穂本舗株式会社です。神戸瑞穂本舗は生パスタやラーメン、そばなどの業務用チルド製品や冷凍製品などを販売し、卸している会社です。 神戸瑞穂本舗は“もっちもちの生パスタ”という商品の製造を委託するため、2013年8月にシマダヤ株式会社と秘密保持契約を締結。製法をシマダヤに開示し、製造委託契約が締結されました。 この委託は2021年まで続いていましたが、その一方で、シマダヤは契約締結の翌年から“ゆであげ生パスタ”という商品の販売を開始したということです。 これに対し神戸瑞穂本舗は、「自社が生パスタのもちもち感を出すために独自開発した原材料の配合や製法がシマダヤの“ゆであげ生パスタ”に不正に使われた」と主張。 今年2月14日、神戸瑞穂本舗は、シマダヤおよび同社のグループ会社2社に対し、不正競争防止法に基づき1億円の損害賠償および同社らが製造及び販売する製品の差し止めを求める訴訟を神戸地方裁判所明石支部に提起しました。
 

営業秘密とは?

「営業秘密」とは、企業などにとって重要かつ秘密としておきたい情報を指します。具体的には以下などが例として挙げられます。 ・顧客名簿 ・新規事業計画 ・価格情報 ・接客マニュアル ・製造方法・ノウハウ ・設計図面 ・新規物質情報 ・金型 不正競争防止法では、窃取等の不正の手段によって「営業秘密」を取得し、自ら使用し、もしくは第三者に開示する行為等を禁じています(第2条4号)。 また、企業は、自社の「営業秘密」が侵害され、または侵害されるおそれがある場合、侵害行為の停止や予防、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除却、損害賠償などを請求することができます(第3条、第4条)。 一方で、すべての情報が「営業秘密」となるわけではありません。営業秘密と認められるためには、以下の3つの要件を満たしている必要があります(第2条6項)。 (1)非公知性(一般には知られていない) (2)有用性(企業にとって役立つ情報。失敗した実験データなども含まれる) (3)秘密管理性(当該の情報に接する人が、「無断持ち出し禁止」「社内のみ」「秘密保持契約が締結されている」など秘密情報と認識できるように管理されている)
 

営業秘密をめぐる訴訟

「営業秘密」については、その該当性が争われることが少なくありません。 経済産業省のリーフレットでは、訴訟で「営業秘密」と認められた事例として以下が紹介されています。 【事例1】 投資用マンションの販売業を営む会社の従業員が、退職し独立起業する際に、営業秘密である顧客リストを持ち出した事案。リストに記載された顧客に対して、転職元企業の信用を毀損する虚偽の情報を連絡したとして、損害賠償請求が認められました。 (知財高判平24.7.4) 【事例2】 家電量販大手の元幹部社員が、退職し同業他社へ転職した際、住宅リフォーム事業などに関する数万件の営業秘密を不正に持ち出し、転職先に不正開示した事案。裁判で営業秘密の使用差止及び損害賠償請求が認められました。 (大阪地判令2.10.1)
 

コメント

ゆで調理時間10秒足らずで、まるで生麵のような食感とコシを実現する神戸瑞穂本舗の“もっちもちの生パスタ”。神戸瑞穂本舗は、長年の研究開発により、粉の挽き方や配合割合にこだわった画期的な商品であると謳っており、商品に対する思い入れの強さが伝わります。 訴訟では、それらの製造ノウハウが「営業秘密」と認められるのか、主に秘密管理性の観点で争いになると予想されます。 このように、訴訟リスクやブランド価値の毀損といった深刻な問題を引き起こすおそれのある「営業秘密」。 「営業秘密」に関しては、不正に持ち出す行為はもちろんのこと、不正に持ち込まれたと知りつつ、その「営業秘密」を使用する行為も禁じられています。 その意味で、企業は、自社の営業秘密を守りつつ、他社の営業秘密を不正使用しない体制を築く必要があります。
 

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