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株主総会における取締役等の説明義務について

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毎年5月後半に企業の法務・総務部門を悩ませている問題は、多くの企業で6月後半に開催される株式総会です。そこで、今回は株式総会のなかでも実務上争われやすい取締役等の説明義務(会社法(以下、「法」という。)314条本文)について検討していきます。

取締役等の説明義務って何

会社法では、株主総会で株主から特定の事項について説明を求められたときには、取締役等(取締役、会計参与、監査役及び委員会等設置会社に関してはさらに執行役)は、当該質問事項について必要な説明をする義務が生じます。これが、取締役等の説明義務の内容です。

 これに対して、以下の場合には、例外的に取締役等の説明義務は発生しません。

 ①当該質問事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合

 ②その質問に対する説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合

 ③その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合

 なお、③の「法務省令で定める場合」の具体的内容については、会社法施行規則(以下、「法規則」という。)71条に規定されています。

取締役等の説明義務で実務上問題となる点とは

 過去の実務で問題となった、及び将来の実務でも問題となりうる問題点とは、

(1)取締役等の「必要な」説明の内容(以下「問題点1」という。)、

(2)取締役等の説明の程度(以下、「問題点2」という。)の2つです。

 まず、問題点1(取締役等の「必要な」説明の内容についてです。)については、既に判例が確定しています。
具体的には、取締役等の説明義務における「必要な説明」とは、株主総会の目的事項に関する質問に対する回答の内容が、平均的株主が当該質問を十分理解ができるために客観的に必要な説明を言います。(例えば、福岡地裁平成3年5月14日)。ですので、今後の実務では判例の判旨を踏襲して具体的場面に対応していくことが求められます。
例えば、剰余金分配に関する株主総会決議について、株主から企業の当期利益に対してなぜ剰余金が当該額にとどまったのかの説明を求められた場合です。この場合、取締役等としては、「確かに当該企業の営業成績は良好ではありました。しかし、弊社は来期に向けて大規模な設備投資を実施することを計画しております。ですので、来期に向けて、多額の資金が必要となります。そうすると、今期の配当は当該額に留まってしまいます。」等の説明が必要となります。
 次に、問題点2(取締役等に求められる説明の程度)についてです。
 取締役等の説明の程度については、質問した当該株主の理解を基準とするのか、あるいは当該質問株主のみならず、その他株主総会に出席した株主の理解を基準とするのかが実務では問題となります。
 この問題について裁判例は、説明義務の程度とは「合理的な平均的株主」が理解出来る程度を言います 例えば、松江地裁平成6年3月30日判決)。また,「合理的な平均的株主」とは、株主総会に出席したおおよその株主という意味で理解すればよいです。
 最後に、裁判例が当該質問株主ではなく株主総会に出席した平均的株主の理解を重視している理由は、取締役等の説明義務の目的が、株主が株主総会の決議事項においてその賛否を決するための判断資料の1つを提供する点にあることに由来します。そうすると、法は、取締役等の説明義務を当該質問株主と質問された経営陣とのマンツーマンの関係として捉えているのではなく、株主総会に出席した多くの株主と経営陣の関係を重視しているといえます。

今後の実務における取締役等の対応

 株主総会における取締役の説明義務で注意しなければいけない点は、取締役等が説明義務を十分に尽くさなければ、その後(具体的には、総会開催日から3ヶ月以内(法831条1項))に株主総会取消訴訟の対象になるおそれがあることです(法831条1項1号)。そうしますと、せっかく成立した株主総会決議が、将来取り消されるリスクが生じてしまいます。 
今年6月後半に開催される株主総会に先立ち、企業側としては、以上の点を踏まえて想定問題集をあらかじめ用意できれば6月に開催される株主総会にも十分対応できると思います。


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