はじめに
ネクスグループの子会社、バーサタイルが11月30日、東京地裁に特別精算申立を行なっていたことがわかりました。負債総額は約28億2300万円とのことです。今回は会社法の特別清算手続を破産手続と比較して見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、バーサタイルはネクスグループの連結子会社で医療介護施設運営の経営コンサルティングやアパレル、ワイン事業などを手がけていたとされます。同社は今年10月にアパレル事業をネクスプレミアムグループに、ワイン事業ををネクスファームホールディングスに事業を譲渡していましたが業績低迷から回復が見込めない状況となっていたとのことです。ネクスグループは11月22日の取締役会でグループ会社再編の一環としてバーサタイルを特別清算で処理することを決定しました。
解散と精算
会社が解散すると、合併や破産の場合を除いて精算手続きに入ります(会社法475条1項)。精算とは会社の一切の権利義務を処理して残余財産を株主に分配する手続きです。現務を結了し、債権は取り立て、債務を弁済していきます。合併の場合は存続会社がそのまま承継し、破産の場合は別途破産手続きによることになります。精算が終了すると株主総会で決算報告の承認決議を受け(507条2項)、清算結了登記を行なって法人格が消滅することになります。
特別清算
精算会社の精算の遂行に著しい支障をきたす事情がある場合や債務超過の疑いがある場合に債権者や株主、清算人、監査役の申立によって特別清算に入ることができます(510条)。特別清算では特別清算人が資産の調査と換価を行いつつ協定案を作成し、債権者集会で債権者の3分の2の同意を得て協定を決定し、それに基づいて弁済していくことになります。協定成立の見込みが無い場合や協定の実行の見込みが無い場合は裁判所の職権で破産手続きに移行することになります(574条1項)。
特別清算と破産の違い
まず破産手続きは有限会社、合名会社、合資会社などあらゆる会社・法人が利用できるのに対し、会社法の特別清算は「株式会社」しか利用できません。そして破産手続きを遂行する破産管財人は会社とは無関係な法律の専門家が裁判所によって選任されます(破産法30条1項)。一方特別清算の場合は会社の代表者がそのまま特別清算人になることも可能です。破産の場合は申立が認められ、裁判所が開始決定をした場合、有無を言わさず財産の換価と配当が裁判所の監督の下で行われ終了していきます。しかし特別清算はどのように返済していくかを債権者との合意によって決定していきます。特別清算のほうが簡易・柔軟な精算方法と言うことができます。
コメント
本件でバーサタイルは今後債権者であるネクスグループなどと協定の合意を得て債務返済を実行していくこととなります。また親会社としても子会社の特別清算によって債権は損金として計上されることになると考えられます。以上のように特別清算は破産に比べて簡易で柔軟な手続きと言えます。また破産よりも予納金等の費用が安く、かかる期間も短いと言えます。そしてなにより一般社会の目から見ても破産より特別清算開始としたほうが同じ倒産手続きでもネガティブなイメージが少なく、グループ全体としての印象も悪くないものと考えられます。グループ内の再編事業で業績の悪い子会社を処理する場合にはこれらの点も考慮し、より適切な倒産手続きを選択していくことが重要と言えるでしょう。