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まもなく施行、改正著作権法について

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はじめに

 情報通信技術の発展に対応すべく改正された改正著作権法が来年2019年1月1日に施行されます。所在検索サービスやコンピューターの内部処理のみに利用されるコピー等、IT技術上の著作物の利用について著作権による制限が緩和されることになります。今回は改正著作権法の概要を見ていきます。

法改正の経緯

 近年のIoT、AI、ビッグデータ等の情報産業の発展により著作物を含んだ大量の情報を組み合わせたサービスが生み出されております。しかし現行の著作権法では利用目的や場面が具体的に規定されており、新たに生み出される情報サービス等に対応できず、形式的には違法となる場合や、許諾手続きが煩雑となりイノベーションを阻害することとなるとされております。そこで許諾を要する場合や許諾手続きを柔軟にし、新しいサービス、コンテンツでの著作物利用を円滑にすることを目的として法改正がなされました。

これまでの改正

 これまでもデジタル化・ネットワーク化の進展にともない2009年と2012年に著作権法は改正されてきました。2009年改正ではサーバー管理者による送信障害防止のための複製、インターネット情報検索のための複製、情報解析のための複製、コンピューターのキャッシュでの複製について解禁されました(47条の5~8)。2012年改正では写真撮影に付随する著作物の利用、著作物適法利用の検討のための利用、技術開発試験のための利用、ネットワーク上の情報提供の準備のため複製が解禁されております(30条の2~4)。

改正法の概要

(1)柔軟な権利制限規定の整備
 今回の法改正ではまず著作物の市場に影響を及ぼさない範囲でビッグデータを利用したサービスのための著作物利用について許諾を要さなくなります。たとえば書籍情報検索サービスでは検索結果とともに著作物の一部を表示する際にも許諾は不要となります。また論文盗用が無いかを検証するための情報解析サービスなどでも許諾なく原典の表示ができるようになります。

(2)教育の情報化への対応
 学校等の教育機関で授業のために他人の著作物を利用して作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信するといった場合にも、その都度許諾を取る必要がなくなります。ただしここに言う「教育機関」は営利を目的としないものに限られます(改正法35条カッコ書き)。

(3)障害者の情報アクセス機会の充実のための対応
 視覚障害者等の著作物の利用機会を促進するための条約(マラケシュ条約)の締結に向けて、視覚障害者だけでなく、肢体不自由などの理由で書籍を手に持てない人のための録音図書の作成等が許諾なく行えるようになります。現行法では視覚障害者等だけが対象となっておりますが、広く書籍等の閲読が不自由な人が対象となります。

(4)アーカイブ利用促進のための権利制限規定の整備
 美術館等の展示作品の解説、紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧することを許諾なく行えるようになります。現行法では紙媒体の小冊子への掲載は許諾不要となっておりますが、デジタル媒体の場合は許諾が必要です。

コメント

 近年AIやIoT等情報技術の発達による、いわゆる第4次産業革命が起きていると言われております。日本でも今後ますますデジタル技術を利用したサービスや産業が加速度的に発展していくものと考えられます。しかし法制度はその速度に必ずしも追いつけていないのが現状です。著作権等の知財分野が最たるものと言えます。今回の法改正でビッグデータを利用したデータベースなどや検証目的の場合には許諾なく許諾物の利用が可能となる場合があります。文化庁が発表したコンプライアンス意識調査では企業等の法人では著作権法については約6割が理解できていない、馴染みがないと解答したとされます。著作権法は一般に考えられているよりも理解が進んでいない法律と言えます。法改正の動向を踏まえつつ、今一度法制度の概要を確認しておくことが重要と言えるでしょう。


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