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三菱電線に罰金、データ改ざんが招く問題点について

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はじめに

 三菱マテリアルの子会社「三菱電線工業」(千代田区)品質データを改ざんしていたとして不正競争防止法違反に問われていた事件で東京簡裁は8日、同社に対し3000万円、前社長村田被告(62)に対し200万円の罰金を言い渡していたことがわかりました。今回は品質データ改ざんによって生じる法的問題を見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、三菱電線は2017年の6月から10月にかけて和歌山県の工場で受注した半導体の製造部品の検査データを改ざんし契約の仕様を満たしているよう装ったとされております。同社では同様の虚偽の検査データを作成し20回に渡って顧客に示してきた疑いがもたれており、20年以上前から同様の改ざん行為が繰り返されてきたと言われております。他の三菱マテリアル子会社2社も同様の被疑事実ですでに有罪判決が出ております。

不正競争防止法の誤認惹起表示

 以前にも取り上げましたが、不正競争防止法では様々は「不正競争」行為が挙げられ規制されております。その中に「誤認惹起表示」というものがあります(2条1項14号)。商品の公告、取引に用いる書類などに原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量等について誤認させるような表示をすることが該当します。原産国を誤認させる国旗の絵を添付したり、2級酒を特級酒と表示する行為などが判例上も誤認表示に該当するとしています。

違反した場合

 不正競争防止法に違反した場合、それにより営業上の利益が侵害され、または侵害されるおそれがある者は差止請求することができ(3条)、賠償請求もできます(4条)。その際不正競争によって得た利益が損害額と推定されます(5条)。また刑事罰として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科(21条2項)、法人に対しては3億円以下の罰金が科されることがあります(23条)。

その他の法律上の問題点

 品質データの改ざんに関しては不正競争防止法違反以外にも法的に問題が生じえます。まず取引当事者間ではその品質を満たすこと自体が契約内容となっている場合、債務不履行の問題が生じます(民法415条)。また品質について定めがない場合でも債務者は中等の品質のものを引き渡す義務があり(民法401条1項)、他にも商慣習や業界の慣習に従う必要があるでしょう。また契約関係が無い場合でも不法行為責任が生じる場合もあります(同709条)。品質改ざんした部品等を使用した製品を購入した一般消費者等が典型例と言えます。

コメント

 本件で三菱電線は自社の工場で製造した半導体部品について仕様を満たしていないにもかかわらず満たしていると装った虚偽の検査データを作成し顧客に示していたとされます。これは「取引に用いる書類」に「質」について「誤認させるような表示」をしたといえ不正競争防止法違反に当たることになります。東京簡裁は組織的、継続的犯行であるとして法人に対しても3000万円の罰金を言い渡しました。顧客や競争者との間でも賠償責任等が生じる可能性も考えられます。昨今大企業による品質データ改ざんが取り沙汰されております。長年の習慣となっており現場では危機意識が乏しくなっている可能性がありますが、発覚した場合の会社に与えるダメージは相当なものと言えます。対外的な責任だけでなく株主等からの責任追及も免れないと言えます。製品の品質や安全性等のデータに改ざんが行われていないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。


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