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【改正民法】債権譲渡に関する変更点

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はじめに

 平成29年5月26日に成立した改正民法が来年2020年4月1日から施行されます。明治29年に制定されて以来、約120年ぶりの大改正となっております。改正項目は約200におよび、特に債権法が大きく変更されております。今回は債権法のうちの債権譲渡に関する変更点についてみていきます。

現行民法の債権譲渡

 債権は原則として譲渡することができます(現行民法466条1項)。しかし当事者間で譲渡禁止特約を付けていた場合は譲渡できませんがその特約について善意の第三者には対抗できないとされております(同2項)。つまり債権の譲受人が特約について善意であり重過失がなければ債権譲渡は有効で、悪意または重過失があれば無効とされております(最判昭和48年7月19日)。また現行民法468条2項では債務者が債権譲渡の通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人にも対抗できるとされております。少々不明確な規定ですが最高裁は債権譲渡と相殺に関して、債権譲渡の対抗要件具備までに債務者が債権を取得していれば弁済期の先後を問わず相殺できるとしております(最判昭和50年12月8日)。

改正民法での債権の譲渡制限

 改正民法466条2項では新たに「譲渡制限の意思表示」という文言が設けられ、これがなされても債権譲渡の効力は妨げられないとされました。つまり当事者間で譲渡制限の意思表示をしていても譲渡は無効にはならず、譲受人がそのことについて悪意または重過失がある場合に債務者は譲受人への弁済を拒絶できるようになります(同3項)。弁済を拒絶された譲受人は相当の期間を定めて本来の債権者である譲渡人に弁済するよう催告でき、期間内に譲渡人への弁済がなければ譲受人への弁済を請求できるとなっております(同4項)。債務者としては悪意の譲受人に弁済することも、拒絶して催告にしたがって譲渡人に弁済することも可能というわけです。

改正民法での債権譲渡と相殺

 改正民法では債権譲渡の際の債務者の相殺についても変更が加えられております。債務者が譲受人に相殺を主張するには、上記のとおり債権譲渡の対抗要件が具備されるまでに反対債権を取得しておく必要がありました。改正民法ではこれに加え、①対抗要件具備よりも前に反対債権の発生原因が生じいていた場合、②対抗要件具備後であっても譲渡債権と同一の発生原因から反対債権が生じた場合にも同様に相殺できるようになりました(改正民法469条2項)。

将来債権の譲渡

 改正民法では将来債権の譲渡についても規定が新設されております。現行民法では将来債権については規定が無く、判例上将来債権の譲渡は有効とされておりました(最判平成11年1月29日)。今回の改正で明文化され、さらに債権譲渡の対抗要件具備までに譲渡制限の意思表示がなされた場合は譲受人はそのことについて悪意とみなされることとなりました(改正民法466条の6)。債務者は上記のとおり弁済を拒絶することができるというわけです。

コメント

 以上のように改正民法では債権譲渡について譲渡制限特約、相殺の扱い、将来債権譲渡に関して変更が加えられております。判例法理として扱われていた点が条文化されていたり、学説上争いがあった点が統一されておりますが、一番大きく変更されているのは譲渡制限です。譲渡しない特約があっても改正法では無効になることはないという点で大きく異なります。そのため悪意の譲受人に弁済しても債権譲渡が有効である以上、有効な弁済として債務は消滅することとなります。反面やはり現行法に比べて譲渡禁止特約の強制力は弱まるため特約があっても譲渡されてしまうことが増えると考えられます。そこで契約書には新たに特約に反して譲渡がなされた場合には契約を解除するといった条項を新設することも一案と考えられます。改正法施行までに改正点を把握して、それに沿った契約書案を準備していくことが重要と言えるでしょう。


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