はじめに
東芝は20日、筆頭株主であるエフィシモ・キャピタル・マネジメントが求める臨時株主総会招集に関し、東京地裁から申立書を受け取った旨発表しました。招集目的は定時総会での議決権行使の集計についてとのことです。今回は会社法の定める臨時株主総会招集請求について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、昨年12月17日、東芝の筆頭株主であるシンガポールの投資ファンド「エフィシモ・キャピタル・マネジメント」は東芝に対し臨時株主総会招集請求を行いました。その目的は、第181期定時株主総会での議決権行使に際し不透明な点が存在するとして会社法316条2項の業務財産状況の調査者の選任を提案することとされております。これに対し東芝側は今年2月1日を基準日とし、その日から3ヶ月以内の臨時株主総会の開催で調整する予定としておりました。しかしエフィシモ側は東京地裁に招集許可申し立てを行ったとのことです。
臨時株主総会の招集
株主総会は原則として取締役が招集することとなっております(会社法296条3項)。しかし一定の要件のもとで株主も臨時株主総会の招集請求をおこなうことができます(297条1項、2項)。議決権の3%以上の株式を6ヶ月以上(非公開会社では保有期間は不要)保有する株主が株式会社に対し請求することができます。この3%の保有割合と6ヶ月という保有期間は定款によって減縮することが可能です。株主総会の目的と招集理由を示した上で取締役に請求を行い、請求後遅滞なく招集手続きが行われない場合、または請求日から8週間以内の日を開催日とする臨時株主総会招集通知が発せられない場合には裁判所の許可を得て自ら招集することが可能となります(297条4項)。
招集許可申立て手続きの流れ
裁判所に株主総会招集許可申立てを行う場合は、①当事者の住所氏名、郵便番号、電話番号、②会社の商号、本店所在地、代表者氏名、③申立の趣旨、原因、理由、④申立年月日、裁判所の表示その他を記載した書面を提出することとなります(会社非訟事件手続規則2条)。そして申立から1~2週間程度で審尋期日が指定され、通常は株式会社の代表者が呼び出され審問が行われ決定がなされます。裁判所では許可申立に関して事前相談等も受け付けているとのことです。
総会資料調査者
会社法316条によりますと、株主総会で取締役や会計参与、監査役、会計監査人が提出した資料等を調査する者を選任することができるとされております。これは総会検査役と異なり裁判所が選任する必要はなく、株主総会での普通決議によって選任することができると言われております。また欠格事由などの規定もありませんが、調査対象である資料等の提出者の取締役等は調査者にはなれないと考えられております。その調査範囲も上記提出資料等のみであり、会計帳簿や計算書類等には及ばないとされます。
コメント
本件で東芝の筆頭株主であるエフィシモ社は第181期定時総会で議決権の集計や議決権行使に際して不透明な点があるとして臨時株主総会の招集請求を行いました。かねてより問題とされ、金融庁の調査も行われた三井住友信託による集計ミスに関連するものとされます。東芝側は今年2月1日を基準日としそこから3ヶ月以内の日を開催予定として調整しておりましたが、エフィシモ側は請求日から8週間以内の日に臨時総会が開催される見通しが立たないことから裁判所に招集許可申立てを行ったものと見られます。以上のように議決権の3%以上を保有する株主は臨時株主総会招集請求を行うことができ、会社が手続きを行わない場合、または8週間以内に開催されない場合は裁判所の許可を得て自ら招集可能となります。招集請求が届いた場合にはこの点も踏まえて開催日や基準日の設定等を検討していくことが重要と言えるでしょう。