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東芝定時総会を第三者が調査へ、株主総会に関する訴えについて

はじめに

東芝が18日に開催した臨時株主総会で、昨年の定時総会の運営に不備があったとして第三者による調査がなされることが可決されました。株主提案により調査が可決されることは異例とのことです。今回は株主総会の手続き、運営に不備があった場合について見ていきます。

事案の概要

 日経新聞の報道によりますと、昨年7月に開催された東芝の定時株主総会で信託銀行の集計ミスにより一部の議決権行使書面が無効となっていたことが発覚しました。また同総会で東芝側が一部の株主に不当な圧力をかけて議決権行使を断念させたとする声もあがっているとのことです。これを受け同社株主である投資ファンド「エフィシモ・キャピタル・マネージメント」は第三者による調査を要求したところ、東芝側は監査委員会による調査で対応しました。しかし投資ファンド側は納得せず臨時総会の開催をしました。今年6月の定時総会で調査報告がなされる予定とされます。

株主総会の手続きの流れ

 株主総会の手続きに関してはこれまでも取り上げてきましたが、ここでも簡単に触れておきます。まず取締役会設置会社では取締役会決議で招集決定し招集通知を行います(会社法298条4項)。取締役会非設置会社では取締役が招集します。一定の場合には書面での通知を要し、会場を確保して株主からの質問等に備えておきます。総会当日は議長による開会宣言、出席株主数や議決権数の報告、監査報告などを経て議案上程、質疑応答、決議となります。議事録は株主総会から本店で10年間、支店で5年間備え置き、株主や債権者の請求があれば閲覧・謄写させることとなります(318条、310条6項、311条3項)。

株主総会決議取消の訴え

 上記株主総会の招集手続きや決議の方法について法令または定款違反がある場合、または著しく不公正であった場合、決議内容の定款違反、決議事項について特別利害関係を有する者が議決権を行使して著しく不当な決議がなされた場合には、株主総会決議取消の訴えを提起することができます(831条1項)。決議が取り消された場合、多くの株主や関係者に影響を及ぼすことから株主総会の日から3ヶ月以内という提訴期間が設けられております。取消原因は取締役会決議を経ずになされた招集や招集通知期限違反、株主の議決権行使を妨げた場合などが典型例です。また自己ではなく他の株主に関する手続き違反についても提起できるとされております(最判昭和42年9月28日)。

決議無効・不存在確認の訴え

 上記決議取消の訴えは手続きの法令・定款違反、決議内容の定款違反の場合に提起できましたが、決議内容に法令違反がある場合には決議無効確認の訴えが提起できます(830条2項)。株主平等原則に違反する決議や、分配可能額が無いにもかかわらず剰余金が配当された場合などが典型例と言えます。また決議自体が存在しない場合には、決議不存在確認の訴えを提起することができます(同1項)。株主総会が物理的に開催されていない場合や手続きの不備が著しく適法に開催されたと言えない場合に提起できます。取消の訴えと異なりこれらの訴えには提訴期間の制限はなく、また訴えによらずに無効を主張することも可能です。

コメント

 本件で昨年の東芝の定時総会では一部の株主の議決権行使の集計が無効となっていたり、また会社側の圧力により一部株主が議決権を行使できなかったとの疑いが生じているとされます。これにより3人の弁護士が臨時総会で選任され今後調査にあたることとなっております。昨年の定時総会からは既に3ヶ月以上が経過していることから、これらの疑いが事実であると判明したとしても決議取消の訴えは提起できませんが、今年の定時総会で報告、追求がなされることが予想されます。以上のように株主総会の手続きや決議については多くの規制が置かれておりどこかに不備が生じた場合、事後株主等によって臨時総会開催請求や訴訟が提起されることとなります。手続き面や議案など法令や定款に違反していないかを慎重に確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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