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巨大IT企業への規制開始、取引透明化法について

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はじめに

経済産業省は1日、巨大IT企業に取引条件の開示などを義務付ける取引透明化法の規制対象となる企業の指定をしたことがわかりました。アマゾン、グーグル、アップル、楽天、ヤフーなどが指定されております。今回は昨年5月に成立し、今年2月から施行された取引透明化法について見ていきます。

事案の概要

 近年、アマゾンやグーグルといった巨大IT企業、いわゆるデジタルプラットフォームがインターネット上で利用者の市場アクセスを飛躍的に向上させ、重要な役割を果たしていると言われております。しかし一方で、規約の変更や理由の示されない取引拒絶など巨大IT企業との取引の透明性や公正性などに懸念があるとされてきました。そこでデジタルプラットフォームに取引条件の開示や運営状況の報告などを義務付け、行政が評価や公表などの必要な措置を講じる「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(取引透明化法)が昨年5月に制定されました。今年2月1日に施行され、今月1日に経産省によって特定デジタルプラットフォーム提供者が指定されました。アマゾンジャパン、楽天、ヤフー、アップルおよびiTunes、グーグルが指定されております。

取引透明化法の適用対象

 取引透明化法4条1項によりますと、同法が適用される「特定デジタルプラットフォーム提供者」を経済産業大臣が事業の区分や規模、売上額、利用者数その他の指標等により、透明性、公正性の向上が特に必要と判断する業者を指定するとされております。そして政令では物販総合オンラインモールでは国内売上額が3000億円以上、アプリストアでは国内売上額が2000億円以上と規定されており、現時点では上記のIT関連企業が指定されております。

特定デジタルプラットフォーム提供者の役割

 特定デジタルプラットフォーム提供者として指定された事業者は取引条件等の情報開示、自主的な手続き・体制の整備および運営状況の行政庁への報告などが求められます。取引条件等の開示では、利用者に対する取引条件の開示や変更の内容、理由、他のサービスの利用を有償で要請する場合の内容と理由、データの利用範囲、出品の拒否・停止の理由、検索順位決定の基本的な事項などの事前開示が求められます。自主的な手続き・体制整備では、公正さ確保、苦情処理、紛争解決、取引先の事情を理解するための仕組み等を構築した指針を作成などが求められます。そして毎年度、経産大臣に事業の概要、苦情処理の状況、情報開示状況、自主敵な手続き・体制整備の状況、自己評価結果を報告することとなります。

行政庁の役割

 経産大臣は上記の指定事業者からの報告書を受理し、取引先事業者や消費者、学識者等の関与のもと運営状況を評価し、その結果を公表します。その際独禁法違反のおそれがあると認めた場合、経産大臣は公取委に対して対処を要請することとなります(13条)。また上記特定デジタルプラットフォーム提供者の義務に違反見られる場合は行政措置として勧告、公表で是正を促し、改善しない場合は措置命令を出すこととなります(6条)。また措置命令に違反した場合は罰則として100万円以下の罰金が規定されております(23条)。

コメント

 近年インターネット上でのモールやアプリ提供などを通じ、巨大なIT組織が形成されております。それにより消費者だけでなく、出品者等の多くの事業者が巨大IT事業者の影響下にあります。そこでは取引条件の不透明さなどが指摘されておりました。今回の経産省による指定によって、アマゾンやグーグル、アップル、楽天などの巨大IT企業は、特定デジタルプラットフォーム提供者は取引透明化法により事前開示や体制整備、毎事業年度ごとの報告が義務付けられます。また同事業者らが提供するプラットフォームに出品する事業者や消費者等はこれらの義務が守られていない場合は経産省に措置を求めることが可能です。指定事業者だけでなく、これらの事業者と取引のある事業者は今後どのような措置が求められるのか、またどのような救済方法が用意されているのかを把握しておくことが重要と言えるでしょう。

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