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大手電力4社に公取委が立ち入り、不当な取引制限について

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はじめに

関西電力(大阪市)、中部電力(名古屋市)など大手電力会社4社が電力販売で互いの顧客獲得を控えるカルテルを結んでいた疑いがあるとして公正取引委員会は13日、立ち入り検査に入っていたことがわかりました。電力自由化をめぐり価格下落を避けようとした可能性があるとのことです。今回は独禁法が規制する不当な取引制限について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、関西電力、中部電力、中国電力(広島市)、中部電力ミライズ(名古屋市)の4社は中部、関西、中国の各地方で大規模工場やオフィスビル向けの「特別高圧電力」と中小規模の工場向け「高圧電力」の販売に際して、お互いのエリアを超えた顧客獲得を行わない旨の申し合わせをしていた疑いがもたれております。電力自由化によりそれぞれの営業エリアを超えた電力販売が可能となったことから顧客の奪い合いによる価格の下落を避けようとした可能性があるとされます。また中部地方の一般家庭向け低圧電力は都市ガス販売についても価格維持を図っていた疑いがあるとのことです。各社は2018年頃からカルテルを結んでいた可能性があるとされます。

不当な取引制限とは

 独禁法2条6項によりますと、不当な取引制限とは事業者が他の事業者と共同して、価格、数量、技術、製品、設備等について相互に事業活動を拘束し、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとしております。事業者同士がお互いに値下げ等をやめ、競争を回避することです。価格カルテルや入札談合などが典型例です。違反した場合には排除措置命令(7条)や課徴金納付命令(7条の2)が出されることとなります。私的独占と並んで独禁法の中でも中核的な規制の一つと言えます。以下具体的に要件を見ていきます。

行為要件

 不当な取引制限の具体的な行為要件は「意思の連絡」と「相互拘束」と言われております。意思の連絡は複数の事業者が互いに価格の引き上げなどを実施する認識、予測をし、歩調をそろえる意思をもつことを言うとされます。一方が値上げの意思をもち、他方が単にそれを認識認容するだけでは足りませんが、互いに明示することまでは要せず、暗黙のうちに認容しあうことで足りると言われております。相互拘束は、複数の事業者が競争回避の実現に向けて、意思の連絡を通じて互いの行動を調整し合う関係が全体として成立していることを言うとされております。

競争の実質的制限

 不当な取引制限における「一定の取引分野」とは、いわゆる市場を意味し、主に需要者から見た代替性の観点からその範囲が画定されると言われております。消費者が一方が値上げされたから他方を買うといった関係がなりたつ範囲ということです。そして競争の実質的制限とは、競争自体が減少し、特定の事業者がある程度事由に価格、品質、数量等の条件を左右することによって市場を支配することができる状態を言うとされております(東京高裁昭和26年9月19日)。関係事業者の市場におけるシェア等が大きければ大きいほど価格等の支配力は強いと言えます。

コメント

 本件で大手電力会社4社は互いにエリアを超えた顧客の獲得を制限する申し合わせをしていた疑いがもたれております。これが事実であった場合は意思の連絡のもとに相互に競争回避に向けた関係が成立していると言えます。また中部、関西、中国地方における電気供給市場においてある程度事由に価格を決定できる状態が形成されていると考えられます。以上のように事業者同士がこれ以上値下げをしないといった意思を互いに認識し協調しあう状況が形成されると独禁法違反の可能性がでてきます。不当な取引制限による課徴金は非常に高額になることが多く、160億円にのぼる例もあります。同業者同士での会合等が行われている場合はこれらの点に留意しておくことが重要と言えるでしょう。

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