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公取委 最低賃金引き上げ控え中小企業へのしわ寄せ防止

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はじめに

 公正取引委員会は、10月以降の最低賃金の引き上げに伴い中小企業が取引先から買いたたきなどの不当な扱いを受けることがないように、下請法の執行強化や相談対応の強化などを軸とするアクションプランを公表しました。

事案の概要

 令和3年8月25日、「中堅企業・中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」における「中小企業等の活力向上に関するワーキンググループ」において、最低賃金の改定を含む労務費や原材料費等の上昇などが下請価格に適切に反映されることを促すべく,本年9月の「価格交渉促進月間」の実施に当たって、関係省庁間で連携して取り組んでいくこととされました。公正取引委員会は、最低賃金の引上げ等に伴い、買いたたき、減額、支払遅延などといった中小事業者等への不当なしわ寄せが生じないよう、取引の公正化を一層推進するため、「価格交渉促進月間」における活動の一環として、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を次のとおり取りまとめ、対策の強化に取り組むこととなりました。

アクションプランの内容

 まず、①下請法等の執行強化が挙げられます。公取委では、親事業者及び当該親事業者と取引のある下請事業者を対象とした定期調査を実施しているところ、令和3年度の下請事業者向けの定期調査において、最低賃金の引上げ等に伴い特に問題となることが想定される「買いたたき」の指導実績が多い業種やコロナ禍において特に影響が出ているとされる業種向けの調査拡大、最低賃金の引上げを含む労務費や原材料価格の上昇の影響に関する質問追加等を行い、下請法違反被疑事実に係る情報収集に関する取組強化を行う予定です。また、本年9月の「価格交渉促進月間」における中小企業庁をはじめとした関係省庁による取組の成果や上記情報収集の成果も踏まえつつ、下請法違反行為等に対して厳正に対処していく予定です。次に、②相談対応の強化が挙げられます。最低賃金の引上げ等に伴い、取引先から不当なしわ寄せを受けやすい中小事業者等からの相談を受け付ける「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」を設置し、下請法に関する個別相談への対応を強化する予定です。最後に、③不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化が挙げられます。最低賃金の引上げにより労務費等のコストが大幅に上昇した下請事業者から単価の引上げを求められたにもかかわらず、親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注することは、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあります。この点について、新しくQ&Aを作成し、公正取引委員会のウェブサイトへの掲載、毎年11月の「下請取引適正化推進月間」における周知活動の強化などにより、事業者への周知徹底を図る予定です。また、公正取引委員会は、中小企業庁と共同して、毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め、下請法の普及啓発を図っているところ、この「下請取引適正化推進月間」の開催に併せて本アクションプランの取組を周知していくとともに、事業者団体等との連携拡大を通じて、全国津々浦々に不当なしわ寄せ防止に向けた取組の情報が行きわたるよう周知活動の拡充を行う予定です。

コメント

 当該アクションプランは中小企業だけではなく、労働者を雇用する大企業にとっても規律すべき事項を再認識するために役立つでしょう。中小企業の企業法務従事者としては、最低賃金の引き上げによるしわ寄せを一挙に受けることを防止するために、当該アクションプランを熟知し、自社が損をしないように制度を利用するオプションを予め用意しておきましょう。

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