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宇宙ゴミ巡り、米連邦通信委員会が民間企業に初の制裁金

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はじめに

アメリカで「宇宙ゴミ」を巡り、民間企業に初の制裁金が科されました。その額、日本円にして約2200万円。昨今、FCCは宇宙政策に力を注いでおり、衛星関連の政策を強化中でしたが、宇宙ゴミに対する措置は初となります。
 

米企業に初の制裁金

2002年にアメリカの民間企業・DISH社により打ち上げられた衛星「EchoStar-7」。DISH社がFCCに提出した宇宙ゴミ削減計画では、ミッション終了時に衛星を地球軌道の上空300kmまで移動させる予定でした。しかし、2022年2月、衛星の残燃料が想定量よりもかなり少ないことが発覚。結局、地球軌道の上空122kmの位置までしか移動させられなかったといいます。 米連邦通信委員会(FCC)は10月2日、「適切な廃棄処分を怠った」としてDISH社に対し取り締まりを行ったと発表しました。このFCCの措置についてDISH社は違反を認め、罰金15万ドル、日本円にして約2200万円を支払うということです。 FCCは、「打ち上げられたロケットの部品や役目を終えた人工衛星などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)を巡り、企業に制裁金が科されるのは今回が初である」と声明を出しています。 FCC TAKES FIRST SPACE DEBRIS ENFORCEMENT ACTION
 

世界的に進む宇宙でのルールづくり

地球軌道上の宇宙ゴミの増加については、世界的な問題として指摘されています。地球軌道上に10cm以上の物体は約22,000個、そのうち約1,000個は各国が運用中の人工衛星で残りの約21,000個以上の物体は宇宙ゴミだといわれています。また、さらに小さな1~10cmの宇宙ゴミはおよそ50万個、1cm以下の微少な粒子は数千万個以上存在すると推定されています。 宇宙はどの国の主権も及ばない空間である一方、各国が宇宙ビジネスに乗り出しています。そんな中、長年、宇宙空間におけるルールメイキングについて検討が続けられてきました。 国連は、1959年に常設委員会として宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)を設置。 また、1960年代に米ソ間の宇宙開発競争が本格化したことを契機に「宇宙条約」が作成され、1967年に発効されています。この条約で「宇宙空間の探査・利用の自由」「領有の禁止」「平和利用」「国家への責任集中」などが定められたほか、2007年にはCOPUOSでスペースデブリ低減ガイドラインが採択されました。 一方で、どの打上げ国の打上げでどの宇宙ゴミが発生したかの特定は難しく、「仮にロケットや衛星がデブリと衝突し打ち上げが失敗に終わった場合、その損害をどのように検討するべきか(誰が責任を負うべきか)」といった論点について、未だ議論が為されている最中です。
 

“宇宙”に関する日本の法律

2040年には、全世界で約150兆円に成長すると期待されている宇宙産業。近年、日本でも宇宙ビジネスに乗り出す大企業やスタートアップ企業が増加中です。中には、すでにアメリカのNASAと契約し、実験を行う日本企業も登場しています。 2023年時点で、国内の宇宙産業の市場規模は約1.2兆円といわれていますが、内閣府が公表した「宇宙産業ビジョン2030」では、2030年代初頭までに2兆4,000億円までに倍増させたいとしています。 日本で宇宙ビジネスを進めるにあたって注目される法律は4つ。 ①宇宙基本法 ②衛星リモセン法 ③宇宙活動法 ④宇宙資源法 この中で ③宇宙活動法では、ロケットなどの打上げの許可制度、人工衛生管理の許可制度、第三者損害賠償などが定められており、「人工衛星等の打上げを行う者は、損害賠償担保措置を講じていなければ、法第四条第一項の許可を受けた人工衛星等の打上げを行ってはならない」などの規定が盛り込まれています。 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律に 基づく第三者損害賠償制度に関するガイドライン(内閣府宇宙開発戦略推進事務局) また、④宇宙資源法では、月などで採掘した宇宙資源の所有権要件について明記されています。 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律
 

コメント

民間企業が、宇宙で出したゴミを理由に制裁金を受ける時代。スターウォーズや、ドラえもんのような映画や漫画の世界だけではなく、現実世界でも宇宙進出が活発化していることが実感されます。 これからの10年・20年で宇宙ビジネスがどのように展開されていくのか。そして、それに伴い、どのような法整備が進められていくのか注目されます。
 

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