はじめに
11歳の児童に重機を運転させるなど、少年らを違法に働かせていたとして、建設会社代表の男らが逮捕されました。
未成年の雇用に関しては、法令等でルールが定められていますが、過去にはこうしたルールに違反したとして、大手企業が書類送検された事例があります。
自立支援施設の代表が児童ら働かせたか
今回、愛知県警に逮捕されたのは、愛知県東海市で建設業を営む会社の社長ら2人です。
報道などによりますと、2024年3月までの1年間、2人は10〜13歳の児童4人に廃材の片付けや、トラックの荷下ろしなどの仕事をさせるなどした労働基準法違反の疑いがもたれています。
このうち、当時11歳だった児童1人には、油圧ショベルを操作して廃材を運ぶ仕事をさせたということです。
事件は、「児童が働いている」という外部からの情報提供で発覚。警察が捜査したところ、社長は建設会社を営む傍ら、自立支援施設を運営していて、働いていた児童4人はその施設の入所者だとわかりました。
施設は建設会社から徒歩10分弱の場所にあるとされ、ひきこもりや不登校の子どもたち約20人(今年3月時点)が全寮制で集団生活を送っていました。
社長は容疑を認めているということです。
なお、本件とは別に、5月23日には、社長の妻が愛知県内の沖合で、小型船上で、施設に入所する12歳の少年と散弾銃を発砲していたとして、銃刀法違反の容疑で逮捕されました。また、妻の父親も、この2人に散弾銃を所持させた疑いが持たれていて、銃刀法違反ほう助の容疑で逮捕されています。
未成年の雇用について
未成年の雇用については、雇用できる最低年齢、労働時間、就労できない業務などが労働基準法で規定されています。
前提として、労働基準法では18歳未満の労働者を「年少者」と「児童」の2種類に分け、成年の労働者と異なる扱いを定めています。
「児童」 満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで
「年少者」 満18歳未満の者
ちなみに、2022年4月1日から民法上の成人年齢が18歳に引き下げられましたが、それに伴い、労働基準法で規定される「未成年(第58条、第59条、第72条、第121条)」が18歳未満となり、「年少者」と同じ定義となりました。
児童の雇用における注意点
まず、「児童」については、労働基準法で定められている、労働者として働くことができる最低年齢に達していないため、原則、労働者としての使用は禁止されています。ただし例外として、新聞配達員などに代表される非工業的業種で、かつ、
①健康・福祉上、有害でないこと
②担当する労働が軽易なものであること
といった条件を満たせば、労働基準監督署長の許可を受けたうえで、満13歳以上の児童を修学時間外に使用することが認められます。また、映画の製作または演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様の条件で使用することが認められています。
もっとも、児童の修学時間を含めて、週40時間以内、1日7時間以内の範囲でしか労働をさせることはできません。
年少者の雇用における注意点
では、年少者を雇用する際には、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。
まず、会社は雇用前に、住民票などの公的な書面で年齢を確認したうえで、予定している業務が労働基準法第62条が禁止する「危険有害業務」に該当しないかを精査しなければなりません。
そして、雇用後は、事業場に年齢証明書の備え付けたうえで、労働基準法上の年少者に関する規定に則り、適切に労務管理を行う必要があります。
【年少者の労務管理】
・週40時間以上の労働の禁止(36協定締結の有無を問わない)
・1週間に1日または4週間で4日の休日付与義務(36協定締結の有無を問わない)
・変形時間労働制の適用の原則禁止
・深夜労働の原則禁止
このほかにも、学校によっては、生徒が学校側に許可をとるように指導しているケースもあるため、年少者が通学する学校のアルバイト規則を本人に確認することが望ましいといえます。
コメント
過去には、引越業界大手の株式会社アートコーポレーションが当時17歳だった少年を深夜に働かせていたとして労働基準法違反の容疑で書類送検された事例があります。
この事例では、2015年11月21日から2016年4月30日にかけて、計25回にわたり、アルバイトの少年を午後10時から翌午前5時まで働かせていたとされます。
元支店長ら社員4人はその少年が当時18歳未満であると知っていたものの、業務多忙を理由に午後10時以降も働かせていたとのことです。
新学期がスタートし、新たにアルバイトに挑戦したり、数ヶ月後の夏休みに期間限定で働きたいという高校生は多いかもしれません。
また企業としても人手不足を感じる中で、高校生などの採用を検討することも考えられます。
一方で、年少者の労働時間や休日・深夜労働の規制に対する違反は、刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)に繋がる重大な結果をもたらします。未成年者の雇用の規則を再確認し、違反なく雇用できるよう準備が必要です。