はじめに
公正取引委員会は先月29日、コンビニエンスストア等のフランチャイズ営業を対象とした独占禁止法上の扱いに関する指針の改定案を発表しました。公取委は現在意見公募を行っております。今回はこの指針改定案について概観していきます。
改訂の経緯
近年コンビニエンスストアの24時間営業やフランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)とのあり方について見直す動きが生じており、公取委でも昨年9月に日本全国の加盟店を対象とする大規模実態調査を行いました。それを踏まえ、本部からの24時間営業の強制や仕入れ数の強制、加盟店の売上を度外視したドミナント出店、見切り品の販売規制など独禁法上も問題となりうる実態が浮き彫りとなり、今回のフランチャイズ・ガイドラインの改訂に至ったとされております。より具体的に想定事例などが記載されることとなります。以下具体的に見ていきます。
ガイドライン改定案の概要
(1)本部の加盟者募集に関して
本部が加盟者を募集するに際して、ぎまん的顧客誘引とならないよう相手方に開示することが望ましい事項が記載されます。たとえば当該地域での売上予想や予想収益を提示する際はそれが既存店舗の平均値から作成した収益シュミレーションであることが十分にわかるよう提示すべきとされます。また時間帯による人手不足や人件費高等など経営に悪影響を及ぼす事情についても情報提供すべきとされます。
(2)仕入れ数量の強制
優越的地位の濫用に該当しうる事例として、実際の販売に必要な範囲を超えて本部が仕入れ数量を指示し、またその数量での仕入れを余儀なくさせることが記載されておりますが、そこに加えて加盟者の意思に反して加盟者になりかわり、加盟者名で勝手に仕入れ発注を行うことも例示されます。
(3)年中無休・24時間営業
本部と加盟者間で契約期間中でも合意により時短が認められると定められているにもかかわらず、時短を希望する加盟者からの協議を正当な理由なく一方的に拒絶し、協議しないまま従前の営業時間を受け入れさせることが新たに例示されます。これも優越的地位の濫用に該当しうるものです。
(4)ドミナント出店
フランチャイズ営業では、一つの地域に集中的に加盟店を出店させ、市場占有率を上げて独占状況を目指す、いわゆるドミナント戦略が行われることが多いとされますが、あらかじめこのようなドミナント出店は行わないとの取り決めをしたにもかかわらずそれを反故にして出店することや、ドミナント出店の際に悪化した分の収益を本部が補填するといった取り決めを反故にして支援を行わないといったことが例示されます。
(5)見切り販売の制限
本部へのロイヤルティ算定の基準となる売上総利益を定義した上で、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を正当な理由なく制限し、売れ残りを廃棄することを余儀なくさせることが例示されます。また見切り販売をするに際して煩雑な手続きを設け、加盟者が見切り販売を断念せざるを得なくなることがないよう柔軟な仕組みを設けることが望ましいとされます。
コメント
昨年の公取委による実態調査では、本部の加盟者勧誘に際して予想収益等の説明が不十分であったり、近隣に同じ加盟店を出店させる際の説明や配慮が不十分であることが多いとされ、また口頭での取り決めを反故にしてドミナント出店が行われたり時短営業の協議の拒絶や、必要な手続きを煩雑にして事実上見切り販売をできなくしているとの意見が寄せられたとされます。これらは独禁法のぎまん的顧客誘引や優越的地位の濫用に該当しうる行為としてこれまでもガイドラインに記載されてきましたが今回の改訂により、より具体的に例示されたり新設されることとなります。このガイドラインはコンビニエンスストアだけでなくフランチャイズ経営全般に適用されるものとされます。フランチャイズ運営を検討する際にはこれらの規制方針を念頭に加盟者の募集を行っていくことが重要と言えるでしょう。